日曜日, 7月 11, 2004

なぜこの本を手にとったか(D)

わたしがグロスマンの「死を生きながら」に興味をもったのには二つくらいの理由がありました。一つは友人の大桑千花さんが住むイスラエルという国について知りたいと思ったこと。大桑千花さんがどんな心情でそこで生きているかも含めて興味がありました。もう一つは、日本におけるイスラエル・パレスチナ問題の受けとめ方への興味です。わたしのそう広くはない体験の中での印象ではありますが、日本では、なんであれ、パレスチナやPLOに対して非難の目を向けることはタブーであるという約束ごとがあるような気がずっとしていました。それは、新聞やテレビなどの報道や知識人のコメントなどを読むたびに、知りたいことの半分しか知らされていない、という気にさせられていたからだと思います。どんな問題であれ、ものごとには両面がある。その両方を見なければ、その問題を知ったことにはならないし、少しでも公平で民主的な考えをもちたいと望むなら両面を見る必要がある、そう思いました。
1954年イスラエル生まれのイスラエル人の作家デイヴィッド・グロスマンの著書を知ったとき、ユダヤ人サイドの考えを知るのに、これほどぴったりの本はないのではと思い手にとりました。政治的には左派の平和運動家で、宗教的には無宗教であるというグロスマン。パレスチナ出身のアメリカ人の学者・作家エドワード・サイードの著書がよく知られている日本において、グロスマンの著書を読むことの意味は小さくないとも感じました。  (大黒)
●デイヴィッド・グロスマン著「死を生きながら/イスラエル1993-2003」(2004年4月、みすず書房刊/二木麻里訳/ヘブライ語の原典からHaim Watzmanにより訳された英語版を底本に、Bloomsburyによる英国版を参照した全訳+出版後、著者より送られてきた7章分)
●"DEATH AS A WAY OF LIFE/Israel Ten Years After Oslo" by David Grossman(published by Bloomsbury Publishing Plc. <38 Soho Square, London W1D 3HB Publishsed in association with Farrar, Straus and Giroux Publishers, New York> in 2003)