水曜日, 8月 11, 2004

読者からの手紙-京都在住のダニエルさんより。(8月6日)

今回コメントを寄せていただいたダニエルさんについて。

ダニエルさんとはエルサレムで数年前に出会い、それ以来京都出身の私はエルサレムに、そしてその入れ替わりのようにエルサレム出身の彼は京都に住みつつ交流が続いています。ダニエルさんは東京大学を経て現在は京都大学で物理を学んでいます。驚くことに、彼はこれまで日本語は一度も誰からも教わったことはなく、すべて独学だそうです。またダニエルさんには過去にエルサレムで2度もテロに遇ったというとても痛ましい経験があり、そういう方の声を聞けることは大変に貴重だと思っています。現在、彼は物理のほかにはユダヤ教の教えも勉強しつつ、日本の社会に生きながらも、きちんと安息日などを守りながら正統派ユダヤ教徒の生活をしています。(大桑)

下記はダニエルさんからの手紙です。 


「始めまして。ダニエルと申しますが、日本に住んでいるユダヤ人です。大桑さんと大黒さんが書いた意見を興味深く読みましたが、ちょっとコメントしたいと思います。

まず、「テレビのドキュメンタリー番組で10代のイスラエル人の男の子が兵役拒否をして、刑務所に入るてん末を追ったものを見た覚えがあります」と大黒さんが書きましたけど、私も兵役拒否しました。偽の「平和」を作るためにテロリスト国を作りたいためではなく、イスラエル政府の政策には反対ですから、何年間刑務所にいてもその政策に協力することは断じてしないです。結局運良く刑務所に入る必要がありませんでしたけど。

Yesha*¹(ユデア、サマリア、とガザ、つまり西岸とガザ)のユダヤ人にとっては、PLOやHamasとの戦争は「パレスチナ問題」よりも「イスラエル政府問題」として考えられています。テロリストが使っている武器は、Oslo Accordsの後にイスラエル政府がアラファットに与えたものだとか、TunisからPLOを誘ったのがイスラエル政府だとか、ガザのユダヤコミュニティーを破壊したがっているのがイスラエル政府だとか、「パレスチナ問題」と思われることがすべてイスラエル政府自体の所為だという考え方もあります。

ユダヤ教のなかに、「lasheker ein raglayim(レシェケール エイン ラグライム)」、つまり「偽りに足がない*²」というイメージがあります。ヘブライ語だと、「Sheker」という「偽り」という意味の文字(シン・クフ・レシュ)の一つ一つには、足が一本*³ しかありません。反対に「Emeth(エメット)」という「真実」という意味の文字(アレフ・メム・タフ)の一つ一つには、足が二本あります。イスラエルにいるアラブ人がアラファットの偽りをまじめに信じていると思えないです。大黒さんが仰った通り、「パレスチナ」という国が1918-1948年にしか存在していなくて、そのときの「パレスチナ」人はアラブ人だけではなくて、イスラエルに住んでいた人たちのみんなさんでした。却って、アラブ人が自分のことを「アラブ人」と呼びましたので、自分のことを「パレスチナ人」と言ったのはユダヤ人だけでした。私の祖父は三十年代に、「パレスチナ人」のためのでもに参加しました。その「パレスチナ人」の意味は、イスラエルに住んでいるユダヤ人でした。

大黒さんが仰った通り、ユダヤ人とムスリムが平和に暮らすことができると私も思います。「宗教的対立が問題の根」ではないとは確かだと思います。問題の由来は、1920年代でのIslamist Movementの時代に始まりました。1929年に戦いを始めたのは、エルサレムのGrand MuftiのHaj-Amin al-Husseiniでした。詳しいことはhttp://www.freerepublic.com/focus/news/846987/postsとかで読むことができます。十九世紀の前に、イスラエルの人口は数万人しかいませんでした。十九世紀と二十世紀の始まりに、ヨーロッパからのユダヤ人と、メソポタミア・シリア・エジプトからのアラブ人がたくさんイスラエルに移民しました。ユダヤ人は「故郷へ戻る」ために来て、アラブ人が労働のために移民しました。そして、1929年に「ヘブロン虐殺」とかがあって、争いが始まりました。現代の偽りに対立している人が少ない理由は、アラブ人がそれを信じているからだとは思いません。「偽りに足がない」から、それを支えることがなければ、今の理不尽な状態は成り立てないと思います。PLOの偽りも支えているのがイスラエル政府の政策です。ユダヤ人がテロリストに殺されているときに、犯罪者が二人いる。その人を殺したアラブ人、とテロ組織を強めたイスラエル政府です。みんなが平和がほしいと思いますけど、平和になるために、偽りを支えてアラブ人のみのテロリスト組織が支配している国を作るのではなくて、真実を認めてユダヤ人を全イスラエルに自由にするのが正しいです。テロ組織に武器を与えるんじゃなくて、テロリストを逮捕する。

ユダヤ人の夢を砕くんではなくて、Yeshaを発達して、みんなが誇りに思われるような素敵な土地にすることが正しいだと思います。アラファットに捨てるんじゃなくて、イスラエルの大事な大事な部分として道・水道・電気構造を作りましょう。聖書から約束された国ですから。ダニエルより 」



訳注(大桑):
*¹ Yeshaはイェシャと発音します。

*² ユダヤ教神秘主義のカバラではヘブライ語の一字一字が漢字のように意味を持つとされていてます。足のように支えになる部分のない文字から成っている言葉は立っていることができずに倒れてしまいます。

*³  足が一本とは、この文字の足があるような形のヘブライ語文字のことを表しています。